連載 コラム

アーチトップ系の現代版 レスポール・クラシック、スタジオ、モダン

2020年12月現在「オリジナルコレクション」「モダンコレクション」に大別されたレスポール。これはブランドの分類を区別しただけでなく、名前と内容のアジャストも同時に行われた。今回はアーチトップのレスポール3機種の内容をレビューしよう。

Modern Collection Les Paul Classic

レスポールの外見に盛り込んだ「弾きやすさ」「軽さ」「多機能」

レスポール・クラシックはスタンダード系のバリエーションとして1990年に登場。比較的長い歴史があり、同じ名前でもコンセプトが変わり、仕様も異なってきた。現在のクラシックはモダンコレクションの中では、ルックスはスタンダードに酷似し、機能は現代的なレスポールだ。「古典に学んだ現代のレスポール」の位置付けだ。

 

■ボディ

ボディはマホガニー材、トップにはメイプル材が使われている。しかし、ボディのマホガニーには9ホールのウエイトリリーフ加工が施され、軽量化が図っている。これにより、スタンダードに比べ、0.5kg程度軽くなっている。この9ホールの場合、サウンドを損なわない程度に軽量化が主な目的なので、セミアコのような大きなナマ音やアコースティック感はない。

 

■ネック

ネックはマホガニー材で、スリム・テーパーのグリップ。つまり、1960年型を範とする薄型だ。このグリップはクラシックが登場した90年代初めから踏襲されているポイントだ。指板はローズウッド、インレイはトラペゾイド(台形)と一般的なレスポールと同様だ。

 

■ピックアップとエレクトロニクス

現在のクラシックの特徴となっているのはピックアップとコントロール類だ。搭載されているPUはバーストバッカー61Rと61T。オープンタイプなので、クリームと黒の2トーンのゼブラが目を惹く。このPUはアルニコⅤの高い出力がセールスポイントだ。まず、ハムバッキング時には、パワフルなハムバッキング・サウンドだ。

2つのボリュームはプッシュ/プルで、それぞれのPUをコイルタップし、シングル・ピックアップとして使える。ヴィンテージ系のPUではシングル時に音量差が生まれやすいので、これはシングル時に他の楽器隊に埋もれにくいPUといえる。

2つのトーンはフェイズ・スイッチとピュア・バイパスを兼ねている。フェイズスイッチにより、レスポールらしからぬトレブリーなカッティングなどにも使える。意外性を演出できる。また、ピュア・バイパスはハイゲインのアンプやディストーションと組み合わせた時に、より生々しいサウンドを生む。

ヴィンテージの楽器は素晴らしい。そして、それは文化として守るべきだ。しかし、1959年だけに答えがあるとしたら、現代に生き、今の音楽を奏でるミュージシャンの答えは貧相になってしまう。レスポール・クラシックは、外見こそクラシックだが、現代のギタリストたちが求める仕様を内包したもうひとつのスタンダードだ。楽器店店頭でも普通に見かけるので、一度、2020年モデルのクラシックを試奏してもらいたい。レスポールの見た目の中に、弾きやすさや多機能があることに驚くに違いない。

《SPEC》

[Body]
■Body Material /Mahogany
■Top Material /Maple
■Weight Relief /9-Hole
■Finish /Gloss Nitrocellulose Lacquer

[Neck]
■Neck Material /Mahogany
■Neck Profile /Slim Taper
■Scale Length /24.75" / 62.865cm
■Fingerboard Material /Rosewood
■Fingerboard Radius /12" / 304.8mm
■Number of Frets /22
■Frets /Medium Jumbo
■Nut Material /Graph Tech
■Nut Width /1.695" / 43.05mm
■End-of-Board Width /2.26" / 57.4mm
■Inlays /Acrylic Trapezoids

[Hardware]
■Finish /Nickel
■Bridge /ABR-1 Tune-O-Matic
■Tailpiece /Aluminum Stopbar
■Tuners /Grover Rotomatics w/ Kidney Buttons
■Pick Guard /Cream
■Control Knobs /Gold Top Hats with Silver Reflector
■Switch Tip /Cream
■Switch Washer /Cream
■Jack Plate /Nickel

[Electronics]
■Neck Pickup /Burstbucker 61R (Zebra)
■Bridge Pickup /Burstbucker 61T (Zebra)
■Controls /2 Push/Pull Volumes (Coil-Tap), 2 Push/Pull Tones (Pure Bypass/Phase)
& Toggle Switch

[Miscellaneous]
■Strings /.010, .013, .017, .026, .036, .046
■Case /Hard Shell Case
■Included Accessories /Includes Gibson Accessory Kit

 

Modern Collection Les Paul Studio

コスパの高さが優秀な実用機

レスポール・スタジオは当初はスタンダードの廉価版として1990年代に登場した。登場以来、ボディとネックのバインディングがないアーチトップという性格は継続。しかし、搭載されるピックアップなどの仕様が毎年のように変更されてきた。今回紹介するのはモデルの再編でクラシックの廉価版ながらウルトラ・モダン・ウエイト・リリーフで更なる軽量化を図った。シンプルで現代的、エントリー向けがキーワードが似合うモデルとなった。

 

■ボディ

ボディはマホガニー材で、トップはメイプル材。ボディとネックにバインディングがないシンプルさだ。ボディはウルトラ・モダン・ウエイト・リリーフ加工がされている。かなり大胆なカットだ。ステージアクションなどを重視する人向けのカットと言えそうだ。

■ネック

ネック材はマホガニー、グリップはクラシックと同様に薄めのスリム・テーパー・シェイプ。指板はローズウッド。バインディングはないが、トラペゾイド(台形)のインレイとなっている。

 

■ピックアップ/エレクトロニクス

ピックアップには490R / 498Tを搭載。これは高出力のピックアップで、ガッツあるサウンドが特徴。2ボリューム/2トーンで、2つのボリュームはタップ・スイッチも兼ねているので、ハムバッキングだけでなく、シングル・コイルのサウンドも兼ねている。

 

レスポール・スタジオは、登場以来、限定カラーを含み、様々なカラーが使われてきたが、2020年モデルではスタジオ定番のワイン・レッドの他、タンジェリン・バースト、スモークハウス・バースト、エボニーがラインナップ。いずれもピックガード、ノブがブラックで外見上の特徴ともなっている。

 

《SPEC》

[Body]
■Body Material /Mahogany
■Top Material /Maple
■Weight Relief /Ultra-Modern
■Finish /Gloss Nitrocellulose Lacquer

[Neck]
■Neck Material /Mahogany
■Neck Profile /Slim Taper
■Scale Length /24.75" / 62.865cm
■Fingerboard Material /Rosewood
■Fingerboard Radius /12" / 304.8mm
■Number of Frets /22
■Frets /Medium Jumbo
■Nut Material /Graph Tech
■Nut Width /1.695" / 43.05mm
■End-of-Board Width /2.26" / 57.4mm
■Inlays /Acrylic Trapezoids

[Hardware]
■Finish /Chrome
■Bridge /Aluminum Nashville Tune-O-Matic
■Tailpiece /Aluminum Stopbar
■Pick Guard /Black
■Control Knobs /Black Speed Knobs
■Switch Tip /Black
■Switch Washer /Black (Not Mounted)
■Jack Plate /Chrome

[Electronics]
■Neck Pickup /490R
■Bridge Pickup /498T
■Controls /2 Push/Pull Volumes (Coil-Tap), 2 Tones & Toggle Switch

[Miscellaneous]
■Strings /.010, .013, .017, .026, .036, .046
■Case /Soft Shell Case
■Included Accessories /Includes Gibson Accessory Kit

 

 

Modern Collection Les Paul Modern

モダンというより未来系を示すレスポール・モダン

2020年に全身をモダンな要素を纏って、ラインナップに新たに加わったレスポール・モダン。

※本記事は、実機を見ていないので、資料から見た要素のみです。要素だけをまとめました。実機を見られたらリライトする予定です。ご了承ください。

 

■ボディ

ボディはマホガニー材。スタジオと同様のウルトラ・モダン・ウエイト・リリーフ加工を施している。トップ材はメイプルだ。

■ネック&ネック・ジョイント

ネック材はマホガニーで、2018年までのスタンダードで用いられていた非対称形状のスリムテイパー・ネックのグリップ。指板はローズウッド材ではなく、高級材のエボニー。しかも、ロー・ポジションとハイ・ポジションで指板のR(アール)を変更しているコンパウンド・ラジアスを採用している。

ネック・ジョイントは方式こそセット・ネックだが、ボディ裏を大胆にカットしている。カット自体はレスポール・アクセスなどでもされたモデルが存在しているが、写真での比較ではモダンの方がさらに大きいモダン・コンタード・ヒールという形状のようだ。

■ピックアップとエレクトロニクス

ピックアップはネック側にバーストバッカー・プロ、ブリッジ側にバーストバッカー・プロ+リードを搭載。コントロールはクリア・トップハット・ノブで、2ボリューム、2トーン、クラシックと同様にコイルタップ機能、フェイズ・スイッチ、ピュア・バイパスを装備。内部配線も基盤を使用した現代的なものになっている。

他に、グローバーのロッキング・ロトマチック・チューナー、アルミ製のブリッジとテイルピースを使用、ピックガードも5プライとなっている。

《SPEC》

[Body]
■Body Material /Mahogany
■Top Material /Maple
■Weight Relief /Ultra-Modern
■Finish /Gloss Nitrocellulose Lacquer

[Neck]
■Neck Material /Mahogany
■Neck Profile /Asymmetrical Slim Taper w/ Modern Contoured Heel
■Scale Length /24.75" / 62.865cm
■Fingerboard Material /Ebony
■Fingerboard Radius /Compound Radius
■Number of Frets /22
■Frets /Medium Jumbo
■Nut Material /Graph Tech
■Nut Width /1.695" / 43.05mm
■End-of-Board Width /2.26" / 57.4mm
■Inlays /Mother of Pearl Trapezoids

[Hardware]
■Finish /Chrome
■Bridge /Aluminum Nashville Tune-O-Matic
■Tailpiece /Aluminum Stopbar
■Tuners /Grover Locking Rotomatics w/Keystone buttons
■Pick Guard /Black 5-ply
■Control Knobs /Clear Top Hats
■Switch Tip /Black
■Switch Washer /Black (Not Mounted)
■Jack Plate /Chrome

[Electronics]
■Neck Pickup /Burstbucker Pro Rhythm
■Bridge Pickup /Burstbucker Pro + Lead
■Controls /2 Push/Pull Volumes (Coil-Tap), 2 Push/Pull Tones (Pure Bypass/Phase)
& Toggle Switch

[Miscellaneous]
■Strings /.010, .013, .017, .026, .036, .046
■Case /Hard Shell Case
■Included Accessories /Includes Gibson Accessory Kit

記事 : 森廣真紀(ギタータウン)

 

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