連載 コラム

Les Paul Standard ’60s ハイパワーPU搭載の60年スタイル

現在(2021年1月)、レスポール スタンダードには3つのモデルがラインナップされている。中でも50sと60sはよく似たルックスと名前だが、楽器としてはLes Paul Standard ’50sと60sは違う、全くの別モデルだ。今回は2020年モデルの中からLes Paul Standard ‘60sをレビューしよう。

Gibson Original Collection Les Paul Standard ’60s

Les Paul Standard ’60s(Bourbon Burst)

1960年製リイシューではなく、広く60年代のギブソンをイメージ

 

▲Gibson Original Collection

シングルカットのレスポールは1960年代だと60年にだけ存在した。翌61年にはダブルカットのレスポール、後年のSGが登場する。これが史実である。しかし、「もし、61年以後もシングルカットのレスポールがその後も引き続き作られていたら・・」を体現しているのがLes Paul Standard ’60sといえそうだ。(68年のLP再生産はもちろん承知の上だが、それはまた別の機会に・・)

というのも、ピックアップは61年からのSGへの搭載を想定したカスタムバッカー61シリーズを搭載。ノブも60年代のギブソンに多く搭載されたシルバー・インサート。ペグも60年代中期のギブソンに採用されていたグローバーのロトマチック。(さらに言うと、60年製という要素を意識的に避けたのか、赤色が多く残る塗装がカラーバリエーションに居ない。)これらを見ると"60年代のシングルカットのレスポール・スタンダード"というIFの存在に思われる。

なぜか「赤」を避けたボディとスリム・テーパー・ネック

60s Unburst

ボディはマホガニー材のソリッドボディ。トップはメイプル材だ。この60sではメイプル材はAAグレードの材が用いられている。そのため、杢目には表情の違いがあるものの、プレーンのトップは少ない(取材時の店頭にはプレーンはなかった。)

もし、1960年製と言う特定の年式をリイシューしたいのであれば、チェリー系の赤が鮮やかなカラーバリエーションが居てもよさそうだ。しかし、バーボン・バースト、アイスティー・バースト、そして、上の写真のアンバーストのように赤を避けたかのようなカラーバリエーションとなっている。

 

ネックはスリム・テーパーという薄めのネックグリップが特徴だ。ナット幅は約43mm幅とオーソドックスながら、全体の厚みが薄い。レスポールでは60年製だけが、薄い個体が多い。(ただし、解釈としては太いものがなく、強調されたかのように薄いものさえある、の方が表現としては正しいように感じる。)が、ギブソンではSGやES-335などの61年以降のものもしばらく薄めのネックグリップである。この60sでもロー・ポジション/ハイ・ポジションとも薄めのグリップに感じる。

 

ピックアップはアルニコⅤのカスタムバッカー61

そしてピックアップにはバーストバッカー61Rと61Tを搭載している。これはオリジナルコレクションのSGであるSG Standard ‘61などに搭載されたのと同じ。バーストバッカーのシリーズだが、マグネットにアルニコⅤを使っている。そのため、高出力がポイントとなる。内部のコンデンサーには50sと同様のオレンジ・ドロップ・キャパシターを使用している。

60sはカスタムバッカー61シリーズを搭載

これらの仕様は50sと差別化され、サウンド面ではパワフルでハードなサウンドを意識しているようだ。もちろん、クリーンなサウンドでボリュームを絞り気味にすれば、ポップスなどでも使える。しかし、特徴を生かすにはアンプやエフェクターでゲインを上げ、ギター本体からコシのある音を出すような音こそ真骨頂と言えるだろう。

 

グローバーのチューナーとシルバー・インサート・ノブ

ペグは60年代中期のES-335などと同様の金属製のボタンのグローバー・ロトマチックを装備している。

 

ボリュームとトーンはシルバーをインサートしたゴールドハット・ノブ。これも60年代のレスポール/SGスタンダードなどと同様の仕様といえる。

 

ポイント

60sは名前に時間軸を持っているが、ヴィンテージやブルースなどのキーワードが薄いスタンダードだ。特に(専用ではないが)SG向けを想定したピックアップのカスタムバッカー61が面白い。アルニコというマグネットは人工着磁で、天然のフェライトと違い(数十年という自然界では短期の)経年変化で磁力が落ちる。そのため、ヴィンテージのピックアップは枯れたサウンドとなり、よくその音が好まれる。が、この61ピックアップでは意図的にアルニコⅤを採用し、元気なサウンドを追及している。木部やデザインはモダンコレクションほど現代的でないが、よりパワフルで、サウンドのコシを求めるようなヘビーなサウンドを求める人向けにアレンジされている。

 

《SPEC》

[Body]
■Body Material /Mahogany
■Top Material /AA Figured Maple
■Weight Relief /None
■Finish /Gloss Nitrocellulose Lacquer

[Neck]
■Neck Material /Mahogany
■Neck Profile /Slim Taper
■Scale Length /24.75" / 62.865cm
■Fingerboard Material /Rosewood
■Fingerboard Radius /12" / 304.8mm
■Number of Frets /22
■Frets /Medium Jumbo
■Nut Material /Graph Tech
■Nut Width /1.695" / 43.05mm
■End-of-Board Width /2.26" / 57.4mm
■Inlays /Acrylic Trapezoids

[Hardware]
■Finish /Nickel
■Bridge /ABR-1 Tune-O-Matic
■Tuners /Grover Rotomatics w/ Kidney Buttons
■Pick Guard /Cream
■Control Knobs /Gold Top Hats with Silver Reflector & Pointers
■Switch Tip /Amber
■Switch Washer /Cream
■Jack Plate /Cream

[Electronics]
■Neck Pickup /Burstbucker 61R
■Bridge Pickup /Burstbucker 61T
■Controls /2 Volumes, 2 Tones
& Toggle Switch (Hand-wired with Orange Drop Capacitors)

[Miscellaneous]
■Strings /.010, .013, .017, .026, .036, .046
■Case /Hard Shell Case
■Included Accessories /Includes Gibson Accessory Kit

記事 :森廣真紀(ギタータウン)

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