2020年7月19日『ESPギターの個性を極限まで理解した男! 五陸 守』というオンライン・セミナーが開催された。これはギタリスト五陸 守が自身のシグネチャー・モデルを含むESPギターの数々をデモ演奏を交えながら解説するセミナーだ。一見大げさなタイトルだが、内容はタイトルに恥じないもので、それぞれのギターの特徴を明確かつ的確に解説している。ESPはキラ星のごとくエンドース・ミュージシャンがいる中で、五陸は大ヒット曲があるわけでもないのにシグネチャーモデルが発売されている。それは彼自身がまるでテストドライバーのようにESPギターの構造を知り、演奏にも長けているからだろう。余談ながら5年ほど前にESPのイベントを取材したことがある。それは6回連続で行われ、いずれも名だたるギタリストばかり出演したが、私がCDを購入したのは五陸 守の『Melodies』だけだ。彼のエモーショナルなプレイはギター好きを魅了する。
記事目次
今回は、彼のインタビュー自体がパーフェクトなギター解説のため、私の解説は無しに、インタビューだけでSNAPPER Goriku Custom "Fairy-I"を解説してもらうことにした。
▲SNAPPER Goriku Custom "Fairy-I" Mamoru Goriku Signature Model 価格=420,000円(税別)
《SPEC》
■BODY : Alder (Thickness 45mm) ■NECK : Hard Maple (CT System Head) ■GRIP SHAPE : Slim U ■FINGERBOARD : Honduras Rosewood ■RADIUS : Compound (240-305R) ■SCALE : 648mm ■NUT : Unbleached Bone (42mm) ■INLAY : MOP Dot ■FRET : JESCAR FW55090-NS, 22Frets ■CONSTRUCTION : Bolt-on (T-5 Ultimate Access) ■TUNER : GOTOH SG360-07 MG-T ■BRIDGE : ESP FLICKER-III w/Tremolo Tone Spring Type2 ×5 ■PICKUPS : (Neck) Seymour Duncan SSL-52, (Middle) Seymour Duncan SSL-52,(Bridge) Seymour Duncan TB-16 ■PARTS COLOR : Chrome ■CONTROLS : Master Volume, Master Tone (CAP. Select SW) 5-Way Lever PU Selector, Mix Variation Switch ■COLOR : Supreme Blue ■PRICE : 420,000yen (without TAX) 本人直筆サイン入り認定証
“Fairy-I”との出会い
-ESP SNAPPER Goriku Custom "Fairy-I"(以下、“Fairy-I”)を使い始めたのはいつのことでしたか?
2017年の2月からです。以前のE-Ⅱも気に入ったギターでしたが、「スナッパーでモデルを作らないか?」という提案をいただいたのがきっかけです。それまでもトラディショナルなシェイプを使ってきましたから、ごく自然な流れでした。
-リクエストした部分はどんなところでしたか?
僕自身が青系の色が好きだったのでシュプリーム・ブルーの塗装にしました。僕の好みの仕様はESPのアーチスト・リレーションの担当の方がよくご存じなんです。だから、あらためて僕の方から「ああしてほしい」とか仕様のリクエストをする必要さえありませんでした。SNAPPERを使っている他のギタリストの方々が、口を揃えておっしゃっていると思うのですが、SNAPPERの良さは“マルチに使えること”だと思うのです。ただ、“マルチという言葉の中身は人それぞれ”なんです。僕の場合、学校の講師を長くやっていますから、とても幅広いジャンルの曲を弾かなくてはならないんです。"Fairy-I"になってからはこの1本でどんな曲もできます。"Fairy-I"はジャンルを越えて使えるギターだと思っています。
ボディ
-"Fairy-I"は、アルダー・ボディなのでカタログモデルの「SNAPPER AL」が基になっていると思います。同じシェイプでアッシュ・ボディのASは試さなかったのでしょうか?
特に、あらためては試さなかったです。というのも、元々、僕の音はアルダーの方がしっくりとくるのは自分でわかっていましたから。
-ボディの形状ですが、ストラトとかのトラディショナルなギターより、小さいですよね?
別のギターですから、ストラトに比べて、どこがどれだけ大きい、小さい、とかではないと思います。ただ、外周のカットのRがきついので、ボティはシャープなイメージですね。それとピックガードの形状がボディの外周近くまであるのも特徴です。それによって“ボディ全体が引き締まって見える”視覚的効果もあると思います。
-SNAPPERはバックのコンターが大きくて特徴的ですよね。
ハイ・ポジションが演奏しやすいのはもちろんです。ですが、ココ(ネック・ポケットの先端ウラ側)のカットの部分がほんのわずかだけ削られているところが、演奏上で大きなメリットになっています。
-えー・・と、ネック・ポケットの先端に近い部分ですね?見た目だと判別しづらいですね。
そうそう。でも、ココが一番気に入ってるところなんですよ!。ハイ・ポジションの低音弦を触る時に、左手の手の甲が当たるじゃないですか? ココがごくわずかでも削れていると演奏している時にすごく助かるんです。
-他社のギターでもネック・ポケットの加工は色々ですよね。ボディのオモテを削るよりもウラの方を削る方が効果的ですが、ESPはさらに綿密に作られているってことですね。
ESPは弾く人のことをよく見ているギターメーカーだと思いますね。
-では、五陸さんがリクエストした唯一のポイントである“色”について教えてください。
シュプリーム・ブルーという色は青の中でも絶妙な色合いなと思います。元々は「レイク・プラシッド・ブルーみたいなギターが欲しいな」と思っていたんですが、今はこちらのシュプリーム・ブルーの方が断然お気に入りです。
シュプリーム・ブルーは、どんなスタイルのギタリストでも似合う色だと思います。僕も、色んな人に持ってもらう、ちょっとした“実験”もしてみたんですけど、ポップなギターを弾く人が持てば、ポップなギターに見えます。クールな雰囲気の人が持てば、クールなギターに見えると思います。このギターの色は僕のところに来てから3年経っていますから、色も良い具合に落ち着いてきていますね。
ネック
-ネックはメイプルで、指板はローズウッドですよね。
はい。でも、僕はロー・ポジションからハイ・ポジションまで使って弾きます。指板材がメイプルとローズウッドでは音が違います。違いを具体的に言うと、高音弦でハイ・フレットの音の伸び方の部分で、倍音の出方が違うと感じます。僕の音楽にはローズウッド指板の方が合っていると思います。メイプル指板のギターを使っていた時期もあるんです。メイプルでエモーショナルなフレーズを「うりゃ!」って弾くと、叫ぶような音の感じはするんです。だけど、静かなプレイまでカバーすることを考えるとローズウッドの方好きです。色気があると思います。あと、指板はコンパウンド・ラジアス(240-305R)になっています。
-ネック材についてですが、五陸さん自身が選んだ材だとか、は?
それはしてないです。ファクトリーの方が良い木材を選んで下さいました。
-ネックのグリップは?
スリムUというシェイプです。が、SNAPPERに限らず、ESPのギターは持った瞬間に、ずっと前から持っていたようなフィーリングがあるのが特徴です。僕も「それってなぜなんだろう?」と不思議に思っていたんです。ある時、工場に伺った時に「職人さんが実際に触りながら作っているからだ」と気づきました。どこのメーカーでも実際に触って作るということはしていると思うんですけど、「これが良し!」って感覚の職人たちが作っているのがESPの強いところだと思いますね。
-最近のESPではジェスカーのフレットが標準で使われていますが、そちらはいかがでしょうか?
気に入っています。以前のギターは別のフレットが使われていて、その頃は1年に1回ぐらいフレットの打ち替えるぐらいに、減りやすかったんです。"Fairy-I"はJESCARのFW55090-NSです。3年間毎日使っていても打ち替えを一度もせずに済んでいます。メンテナンスも擦り合わせ程度で良いんです。ジェスカーは素材が硬めだとは聞いていましたが、使っていくと一応、減ることは減るので安心しました。
-中には、全然削れないフレットというのもありますよね。
そういうギターはフレットの音しかしないような気がするんです。(個人の)好みだとは思うのですが・・
-五陸さんにはジェスカーが、音も硬さも、ちょうどいいフレットなんですね。チューナーはどうですか? これも音に影響があるパーツだと思います。
GOTOH SG360-07 MG-Tです。僕はマグナムロックのペグが好きなんです。これ同様の機能があるスパーゼルを使っていた時期もありまして。弦をロックする部分の機能はどちらも似ているんです。でも、緩める時の精度はゴトーの方が優れていると思います。
-え? 緩める時の精度??ですか?
ええ。スパーゼルは弦を緩める時に、ストリング・ポストの中にあるロックから弦が外れないことがありました。それはポンポンと叩いてやると解除されるのですが、ゴトーのチューナーでは何もする必要が無く弦が外れます。ゴトーの方が(弦を交換する時に回転させる金属製のノブが)“痛くない”っていうのも大きいです。
ジョイント
-5点止めのネック・セット・プレートの効果は感じますか? この5点止めの手法はESPが得意としていますけど。
4点止めよりも面積が大きいので(演奏していても)密着しているのを感じます。この後、お話ししますが、ネック・セット・プレートを交換した際の効果をより感じるポイントになっていると思います。
-僕はヴィンテージのギターの取材が多いので、それらとの比較になりますが、4点止めの場合、四方の四隅にそれぞれボルトがあります。これに対して、ESPの5点止めでは、左が2本、右が3本でジョイントの締め付け方や強さにバリエーションが増えていると思っています。
構造的にはたぶん右側が(3本でなく)2本でもジョイントの機能は果たせると思います。カットの形によることの他、ここ(右側の真ん中のボルト)を外して4点止めで使う方もいらっしゃるようですね。僕は試していないのでどういう効果になるかはお答えしかねますけど・・・
-五陸さんはご自身で触れる人だから、自分でメンテしているのですか?
いえ、僕もESPさんのクラフトマンの方に全てお願いしています。
-で、"Fairy-I"が最初納品された時には、このネック・セット・プレートがチタンだったものをブラスに替えたそうですね。その辺の経緯について教えてください。
ブラス製が登場したのはごく最近です。このギターが出来た頃にはチタン製のプレートしかありませんでした。僕は一昨年の秋ごろだと思いますが、ブラス製プレートの開発段階から使わせていただいてます。なので、一度ブラス製を付けてから、その後、チタン製に戻すといったテスト役もしていました。
-自動車メーカーのテストドライバーみたいでかっこいいですね
まさに! 光栄な任務です。
-実際に替えてみていかがでした?
ブラスの方がタイトでソリッドな感じがしますね。ネック側とボディ側の鳴りが一個にまとまるんです。サウンド面では低音成分が増えた感じがしました。なので、音が飛ぶように「ズドン!」と増す感じになります。
-チタン製の方はどんなイメージですか?
チタンの方がエアー感があるというか、ちょっとアコースティックな雰囲気がすると思います。
-それはどちらが優れているとかいうわけでは・・
ありません!完全にお使いいただく方の好みで選んでいただくポイントだと思います。チタンはブラスと比べるとすごく軽い素材です。軽いチタンは音も軽めで、重いブラスは音も重いです。重さによって音がハッキリと変わりますね。テストする前は、こんな小さな部品で、しかも、弦に直接触れる部分ではないだけに、「どれだけ音が変わるんだろう」と思っていたんですけど、(その変化に)びっくりしましたね。しかも、このプレート自体は、ただの金属プレートじゃないですか? でも、長い時間をかけて開発されたものなんですよ。
-実際に演奏している五陸さんのコメントは参考になります。SNAPPERはボルトオンだから、このネック・セット・プレートのチョイスでも音のキャラクターを変えられますね。このプレートの交換はご自身でされているのでしょうか?
いえ、他の調整と同様に、僕もクラフトマンの方にお願いしています。取り付け自体は簡単ですけど、取り付け具合によって音が変わってしまうので、皆さんもお買い上げいただいたショップの専門家にお願いした方が良いと思います。
エレクトロニクス
-ピックアップは? SNAPPERは色々仕掛けがあるギターですが。
ブリッジ側がセンモア・ダンカンのハムバッキングの「TB-16」です。ネック側とセンターは両方ともセイモア・ダンカンの「SSL-52」ですね。ブリッジ側のTB-16はカタログモデルと同じピックアップですが、レギュラーはカバード、"Fairy-I"はオープン・タイプのものにしています。これは他の2つのピックアップのトレブルにあわせて“天井を高めたような感じ”にしてバランスを取りやすいようオープンにしてもらいました。一方、SSL-52はシングル・コイルですが、内部のマグネットが独特で、低音弦側(4~6弦)がアルニコⅤ、高音弦側(1~3弦)がアルニコⅡという組み合わせのピックアップです。このピックアップは手元でゲインを下げた時に、マグネットの違いがより出てきます。
-さらにスイッチ類も色々ついていますよね?
5ウエイのスイッチで、ポジション(をネック側から1から5に表記した場合)「1」「3」「5」がそれぞれ「ネック」、「センター」、「ブリッジ」PUです。
それらの中間の「2」と「4」でミックス・バリエーション・スイッチが効きます。ミックス・バリエーションが「外側」だと「オフ」、「内側」で「オン」になります。「オフ」だと一般的な5ウエイと同じように「2」で「フロントとセンター」、「4」で「センターとリアのネック側のシングル」。これはオート・タップになっています。
「オン」だと「2」で「3つのPU全部」で、リアはネック側のタップです。「4」だと「ネックとブリッジのネック側」となります。僕が一番気にいっているのはシングルを3つ全部鳴らした音ですね。
-3つ鳴らした音はどんな音ですか?
独特の“ツヤ感”が出るんです。この音は他のギターでは出せない、このギターだけの音ですね。普段、僕はアンプを歪みのセッティングにしていて、手元のボリュームの操作で歪みの量もコントロールします。ゲインを落とした時もきらびやかなツヤ感がある音は出ますし、クリーン・トーンでカッティングとかアルペジオをやると抜群にいいです。これを他のギタリストに「試してみて」と弾いてもらうとたいていの人は驚いてくれます。
-ストラトなんかもPUは3つですが、3つが全部鳴るっていうのは普通は無いですものね。
3つ鳴らそうって工夫したスタッフには感謝(笑)・・・してます。
-ボリュームとトーンの間にミックス・バリエーション・スイッチがあるのは演奏中、操作できますか?とても操作がしにくいように思います。
考え方が逆ですよ。場所もそうですが、スイッチの上の部分が短いでしょ?これらは“演奏中に間違って触れてしまわないように”という配慮なんです。ギタリストがはっきり意思をもって触らない限りは切り替わらないようになっているんです。さっきのネックポケットと同じようにESPのギターは弾く人のことを本当考えて作られているギターなんです。
-なるほど! トーン・ノブはプッシュ/プッシュのスイッチですよね?
はい、これは内部のコンデンサーを切り替えるスイッチです。下がっている状態だと一般的なトーン。上がっている状態ではちょっとマイルドなトーンになります。プッシュ/プッシュというのは良いですね。もし、プッシュ/プルの操作だと演奏中に切り替えしにくい、というか、できないじゃないですか。
-プッシュ/プッシュの切り替えは頻繁にしますか?
します。僕は手元でボリュームをよく操作するんですけど、トーンの操作も頻繁にします。"Fairy-I"にはハイ・パス・フィルターが入っていて、ボリュームを絞っていった時にもトーンが落ちないようになっています。だから、ボリュームをロー気味にした曲の時は(ノブが上がっている)マイルドなモードをよく使っています。クリーンなサウンドの時には特に繊細に効くので便利です。
ブリッジ
-五陸さんはボリュームやトーンだけでなく、頻繁にアーミングで変化をつけますよね?フリッカーⅢについて教えてください。
フリッカーⅢの一番良いところは“音”です。フリッカーⅢは全部がブラスで出来ていて、音の立ち上がりが良くて、ブライトなサウンドが特徴です。この駒もメッキがされていますけど、素材はブラス製です。ブリッジは常に弦の振動を受け止めているパーツです。だから、特にこだわるべきポイントかなと思います。なので音の違いを最初に挙げました。
構造を言葉で説明するのは難しいんですけど、トレモロ・ブロックの真ん中にブロックが入っていて、アーミングした時にも、フリッカーⅢは低音弦側と高音弦側が同じように動きます。とても安定しています。2点支持などの場合、アーミングすると片方のシャフトがズレちゃったり、ひどいのは外れちゃうような構造のものもありますので。
あと、耐久性も抜群です。普通に使っている分には壊れないと思います。実は3年間で1度だけ駒部分のメッキが痛んで変えました。僕は毎日何時間も講義のために演奏するので、他のプロギタリストよりギターを酷使しています。それに、仕事で一日中ギターを弾いて家に帰っても、そこからまた弾いちゃうクチですから(笑)。だから、耐久性はとても大事なんです。それを3年以上続けて、駒のメッキが少し剥がれただけというのはすごいです。
About “Fairy-I”
-このギターを使い始めて3年という時間が経過しています。その上で、あらためてこのギターを評価してもらえますか?
スイッチの切り替えとかエフェクターを踏んだりのプレイはあまり得意な方ではなかったんです。僕は自分の手と手許のボリュームで表現するタイプのギタリストなんです。だから「このギターには色々な機能があって使えるかな」と思っていたんです。例えば「コンデンサーが切り替わる?それって使うかな・・」とか。でも、やってみたらなんてことはない・・(強く)「使うんです!」(笑)。
使えるギターの音が増えると、想像できる音楽のバリエーションも増えていくんです。“ギターから出る音で新しい着想の曲が生まれる”っていうのも当然あります。SNAPPERには色んな音、音楽を教えてもらった気がします。それに、僕の汗と涙が染みついていて(笑)、今は完全に僕の身体の一部になっています。弾いている僕にギターが合わせてくれるかのようなギターです。
▲バック
【ESP SNAPPER Goriku Custom "Fairy-I" 製品情報】
https://espguitars.co.jp/artists/10770/
Road to SNAPPER / 五陸 守(インタビュー前編)
以下は、上のインタビューの前に訊いたものだ。ファン、そして、五陸 守を知りたいと思った人のために前後が逆となるが、収録しておく。
もし、あの時キックボードを買っていたらどうなっていたか(笑)。
-ギターとの出会いですが、最初からストラト系のギターでスタートしたのでしょうか?
一番最初は、ブルース好きの従兄のお兄ちゃんがギターをやっていて、その人にちょっとだけギターを教えてもらったことがあります。でも、その時はFのコードが押さえられずに、すぐにやめちゃいました・・でも、「また、いつかギターはやりたいな」とずっと思っていました。その後、中学2年生の時にお年玉でギターを買いました。当時はキックボードが流行っていたんです。お年玉でキックボードを買いに行ったんですが、だけどキックボードが売り切れていたんで、仕方なくギターを買ったんですよ(笑)。もし、あの時キックボードを買っていたらどうなっていたか(笑)。その頃はパンクやメロコアが好きだったのでレスポール・シェイプでした。
-レスポールでパンクロックを? 今の五陸さんとはイメージが違いますよね。
はい!パワーコードばかり弾いていました(笑)。
-そんな少年が、なんでテクニカルなギターを弾くようになっていったんでしょうか?
高校3年生ぐらいの頃に「もっとギターが中心の音楽ってないのかな?」って思い始めたんですね。僕は『ESPギター・クラフト・アカデミー』を卒業してますが、そこには音楽好きが集まりますから、その頃、友達と色々な音楽の情報交換をしました。その流れで、今の音楽の形になっていきました。
もし、ESPギター・クラフト・アカデミーに行ってなかったら、今のような演奏へのこだわりも無かったと思います。
-ん?・・・演奏の方ではなくて、ギターを製作するギター・クラフト・アカデミーの方に進学されたんですか?
そうです。元々、子供の頃から図工の授業も好きでしたし、プラモデルを作るのもすごく好きだったんです。なので、「自分のギターは自分で看れるようになりたいな」と思ったのがギター製作学校に進学したきっかけです。
-レスポール系でスタートしたギターの遍歴がストラト系のギターに移っていくのはいつ頃からですか?
ESPギター・クラフト・アカデミーでは1年目にストラト・タイプのボルトオンでギターを作るカリキュラムがあるんです。その時に自分で作ったストラト・タイプが本格的なストラト系のギターになります。
-その頃はどんな音楽を聴いていましたか?
友達に進められてイングヴェイ・マルムスティーンとかを聴いていました。初めて聞いた時には全然理解できなくて、北欧系のメロディック・メタルとかを聴いたりもしました。でも、そんな人たちのルーツをたどるとイングヴェイなどのスタイルに行くと気付いてあらためて聴き直しました。その頃は、僕も世界一速く弾きたかったです(笑)。
-上手くなる過程で、誰でも必ず通る道ですよね(笑)。
でも、僕は五陸さんのプレイはエモーショナルだからエリック・ジョンソンやジェフ・ベックがルーツなのかな?と思っていました。
エリック・ジョンソンもギター・クラフト・アカデミー時代に友達から教えてもらってずいぶん聴きました。
-五陸さんの音楽形成の中でESPギター・クラフト・アカデミーの存在は大きいですね。
音楽って“形のないもの”じゃないですか? でも、ギター・クラフト・アカデミーでは(ギターという)“形があるもの”を作るんです。「上手くできている」、「できていない」がハッキリと“形”に出てくるんです。先生方はプロの職人さんですから、プロの目線、基準で生徒のギターを見てくれるんです。先ほどお話しした1作目のストラトタイプのギターなんですけど、そのギターが完成して、家に持って帰ったんですね。そうしたら僕は持って帰った初日に、ネックにスキャロップ加工をしちゃったんです。
-え??? せっかく完成したばかりなのに?
スキャロップ加工のカリキュラムは2年目にあるんです。ですが、僕は持って帰って、早速スキャロップをやってみました(笑)。そうして出来上がったギターを先生に見てもらったんです。そうしたら、先生はすごく丁寧に見てくださいました。そうしたら「・・ん・・粗い」とだけ言われましたね(笑)。僕にはそれが大変衝撃で・・・「あ・・全然違うんだ?」って思いました。やっぱりプロの目線は違いますね。
その時からですね。音楽を作る時も“伝える”ということを意識して、演奏も丁寧に。「これでいいや」と妥協することがなくなりました。もし、ESPギター・クラフト・アカデミーに行ってなかったら、今のような演奏へのこだわりも無かったと思います。そのぐらい行ってて良かったと感謝しています。
作ることを意識しながら作曲すると技術も向上していくことができると思います。
-昨日(7月19日)の五陸さんのオンライン・セミナーを拝見しましたが、配信だと、手許の動きがバッチリ見えます。ずいぶん演奏が丁寧だなと思って見ていました。楽器の構造も知っていて、僕も参考になりました。『理解した男』とは大げさなタイトルだけど内容に偽りがありませんね。どちらもギター・クラフト・アカデミーでの経験がバックボーンにあるんですね。
僕は今はギタリストですが、ギターが生の木の状態で触れた経験があります。これは、貴重で、自分の強味になっていると思います。
-五陸さんのプレイはエモーショナルだったり、速弾きしたり、スウィープしたり、かなり多彩なプレイが特徴です。ギターの演奏はどこで覚えたものですか?
僕は特定の先生についたり、講義で学んだりとかの経験はないんですよ。ほとんどが自己流なんです。
-すごく意外です・・自己流で、あんなに正確なプレイをできるのはすごいと思います。
音楽に関しても作ることが好きなんですよ。だから、ビギナーの頃から作曲はよくしていました。その頃の曲は作品と呼べるほどのものではありませんでしたか、作ることを意識しながら作曲すると技術も向上していくことができると思います。
(本来はこの部分に続いて、Fairy-Ⅰのインタビューが以下に続く形で行われました。)
五陸守 インフォメーション
五陸 守はマルチな才能を生かし、ひとりのギタリストに留まらず、幅広い活動をしている。SNSなどで発信している情報もそれぞれの特徴を活かしたものなので、以下をフォローすると有益な情報をゲットできそうだ。
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