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「人が感動する良い音楽を創れる楽器を作る」Sago New Material Guitars 高山 賢

「人が感動する良い音楽を創れる楽器を作る」
Sago New Material Guitars 高山 賢

▲Sago New Material Guitars 高山 賢 氏

関西を拠点に活動し、オーダーメイドのギター/ベースで高い評判を得ているSago New Material Guitars。オーダー品が多い性質上、実機を目にする機会が少ない同ブランドが2023年7月1日と2日に横浜で開かれたYokohama Music Style 2023に出展した。その会場で高山 賢 氏をキャッチし、インタビューした。

このインタビューでは、ブランドの成り立ちやポリシーといった基本的内容から、新しい素材への挑戦について語ってもらった。1本1本が異なる仕様のため全貌をつかみにくいブランドの概略を訊くことができた。

 

ミュージシャンには成れなかったんです。でも、ギターをいじることが好きで、ブランドをスタートしました。

Sagoさんは創業されて何年になりますか?

今年で19年、来年20年になります。

もっと新しいブランドのように思っていたのですが、ずいぶん長い歴史もあるんですね?元々楽器業界の、どこかのブランドに属していたことがあるのでしょうか?

全くありません。ミュージシャンになりたかったんですけど、ミュージシャンには成れなかったんです。でも、ギターをいじることが好きで、友達のミュージシャンのギターをリペアしたり、ネックを作ったりするうちに評判になりました。やるならちゃんと場所を借りて、しっかりやろう、としたのが始まりでした。

なるほど、だから「ミュージシャン本位」というイメージがするんですね? 独自の視点やオリジナリティが強いブランドに思います。

そもそもが、「音楽を作って誰かに聴いてもらいたい」ということが根っこにあります。楽器作りも音楽を作る第一歩というイメージです。創られる音楽に必要な楽器を作りたい。だから、オーダーメイドにこだわっています。
もし、「良い楽器とは?」と問われたら、「人が感動する良い音楽を作れる楽器だ」と答えるようにしています。

ホームページなどを見ると工場は大きいイメージがありますが?

いえいえ、そんなことはありませんよ。月産で20本も作れるかどうかの工場です。スタッフも僕を含めて7人ですから。

そうなんですか?! 今日の展示品を見てもかなり凝ったものが多いので、もっと大きいかと思っていました。

フルオーダーのギターやベースだと月5本から7本作れれば良い方です。

フルオーダーの仕組みについて教えてください。楽器店経由と直接の両方があるようですが。

今だと、ネットを使った直接のオーダーの方が多いです。ネットなら使う材料などの写真もメールなどでやり取りできますし、お客様のリクエストや製作状況の確認も電話などで細かく相談できます。

オーダーメイドの場合、ギターとベースだとどちらの方が多いですか?

ほぼ半々ぐらいで、ギターの方が少し多いかもしれませんね。

オーダーの内容で多いのは?

“見た目”・・ですかね。こういう形に始まり、木材、塗装といったオーダーです。でも、プレイヤビリティ的なところも無視できないので、今お使いになっている楽器のネックと併せてほしいというカスタムグリップのご注文。あとはピックアップの好みに関わるご注文も多いですね。でも、共通しているのは、見た目。自分が持っているものをかっこいいものにしたいというのはあります。

自分のアイコンとして、ですか?

そうですね。

Sagoさんはアーチストとのリレーションもかなり活発にしていますよね。それはブランドポリシーとして、でしょうか?

今、多くのギタリスト/ベーシストにお使いいただけていることは本当に光栄です。でも、最近では積極的にミュージシャンにアプローチするというのは減りましたね。最初の頃は自分も成長したかったので、色々な方の評価を求めて、こちらからアプローチしてきました。最初はthe pillowsの真鍋(吉明)さんでした。真鍋さんから次々色々な方をご紹介してもらったり、口コミとしても広がっていきました。

 

カーボンネックはステージ上の温度や空調の影響を受けず、気候にも左右されないので、1年中最良のコンディションを保てます。

今回の出展品は方向性が広くて、カスタムメイドらしさをだしているように見えましたが、
中でもイチ推しは“カーボンネック”ですね。

カーボンネックは去年ぐらいから始めているのでご存じかもしれません。サーモウッドも僕が世界で初めて採用しました。今でこそウッドショックなどと言われるようになりましたが、ずっと前から僕は木材が不足すると思っていました。だから間伐材も使えるようになったらいいなと思っていたし、杢目に頼らないラップ塗装のような事もしています。希少な材料ばかりを使うのは良くないなと思っています。カーボンネックもその一環で、「木材と同じように使えるカーボンネックができたらいいな」と思っています。一昨年ぐらいから始めて、かなり完成形になりました。これからはどんどん使っていきたいと思っています。

▲写真左のギターと中央のベースには、それぞれカーボン製のネックが使われている。

 

カーボンでネックを作るメリットはどんなことがありますか?

まず個体差がほとんどなく、材料として安定している点です。もちろん多少の個体差はありますが、木材に比べると、ほぼ個体差がないと言っていいです。また、気候や温度差に左右されない点も大きいです。1年を通じて最良のコンディションを保てます。

ヨットなどはカーボンで作られていますからね。それこそ1日のうちで氷点下から灼熱まで想定される海の上で使われている素材です。

そうですね。ライブのワンステージでも照明に照らされたり、空調が直接当たったりで、木材のネックの状態は変わりますから。プレイヤーの立場だとそういう不安要素はひとつでも無い方がいいです。

音や触感では、どんな特徴がありますか?

たぶん、カーボンは固くて冷たい音みたいなイメージがありませんか?今回はそういう先入観を払拭したかったのです。内部を中空にしたり、メイプル+ローズウッドと同じぐらいの重さになるように調節しています。そうすることでヘッド落ちしにくくしています。さらに、木と同じようにしなるようにしています。これらによって、より振動しやすくなっています。もちろん、トラスロッドも仕込んでいます。弦の張力には負けてしまうけど、そこからロッドを締めることで、ネックが動かなくなるようにしています。一見矛盾しそうなことでも色々試しました。弦の振動を伝えて、しなるけれども、ネックそのものは動かないというところにいきつけました。

▲どちらのネックもカーボンの職人によるハンドメイド。高山氏が楽器に求められる性能を伝え、何度も試作を重ねることで、ほぼ完成形という状態に持ってきた。Sago NMGのブログでも明かされているように、このネックは炭丸ギター製である。ギタータウンは炭丸ギターと友好関係にあり、私が炭丸ギターにお伺いした際には、高山氏のリクエストの意図を私が解説するという機会もしばしばあった。また、トラスロッドの有無、重量調整のために厚さを変え、重さの検証するなど試作品を目撃している。実際、木製のネックとは触感が良い意味で異なり、最新の“型”は形状も良く手になじむ。また、ステンレスフレットとマット系のカーボンの指板による独特の滑りは、ビブラートやチョーキング時に快感をもたらす。オーダーメイドが中心の製品なので、試す機会は各種のギターショーになるだろうが、もし、見かけたら、サウンドと触感をぜひお試しいただきたい。

 

今、お勧めの和材はボディ材なら「栗」と「欅」、ネック材なら「楢」と「樫」ですね。

今回も和材の出展がありましたね。

この数年のコロナ禍、ウッドショック、円安などが原因で、洋材の値段が高くなったので色々なブランドも始めましたね。ウチは和材を採り入れ始めたのは十五~六年ぐらい前からなので、和最も早い時期に材を採り入れたブランドです。和材は日本では今のところたくさんあるし、楽器的にも良いとされる木材もあります。そういう木材を積極的に使っています。

ノウハウか多いからこそお尋ねしますが、今、注目の和材は何ですか?

以前から山桜などは使っています。今回出展したギターもボディ材が山桜。ネックには楢、指板には樫を使っています。今だと、ボディ材であれば栗(クリ)と欅(ケヤキ)ですね。ネック材だと楢(ナラ)や樫(カシ)はいいですね。

基本的な質問ですけど、栗は洋名だとチェスナット、楢はオークですが、木材としては別物として考えた方が良いですか?

全然違います。似て非なるものです。マホガニー材も産地が違うと別の木材というほど違うのは皆さんご存じでしょう。和材もそれと同じです。だから、ウチでは「これは『栗』です。」「これは『欅』です」という表記をしています。もし、「これ『チェスナット』でしょ?」と問われたら、「いえ、これは『栗』です」と答えるようにしています。その辺は明確にこだわるべきポイントです。その上で、栗や欅はすごくいい木材なので、今後はそれらをレギュラーで使っていくことになるだろうなと思っています。古くからやっているのもあってNHKさんでテレビ取材を受けたり、和材が気になってお問合せいただたいたお客様も「お任せするのでその材でやって下さい」という方もいます。最近だとオーダーの半分ぐらいが和材になっています。

▲今回出展の和材を使ったSonia。山桜を使ったボディには軽井沢彫りによる図柄、ピックガードにも墨の図柄をあしらっている。ネックは楢、指板は樫を使用。ナチュラル・カラーにより、杢目の特徴もわかる。

 

エレクトロニクス関係は何か新しいものは?

これはまだ言えないのですが、ピックアップで、今までにない新しいことをしようと思っています。線材には、今までに楽器業界では全く使われていないものを。マグネットにもアルニコでもフェライトでもないものを使います。それでカッコイイ音が作れれば、良い音なのです。それをアーチストさんに使ってもらって、「これっていいね!」と言ってもらえれば製品化します。これはぜひ楽しみにしておいてください。

僕の前職ではお伺いしたことがありますが、ギタータウンとしては最初の登場となります。そこでSagoさんのポリシーを教えてください。

毎回言っていることですけど、楽器作りは感動作りの第一歩なんです。良い楽器を作ろうというよりもいい音楽を共に作ろう、というのがポリシーです。「みんなで良い楽器を作ろう」が、ぐるぐる回って、「良い音楽を作る」に繋がっていく。結局、みんなのビジネスになっていく。そう考えてギターを創っています。

今日はYokohama Music Style 2023への出展の最中というお忙しい中、インタビューさせていただきありがとうございました。


Sago New Material Guitars
https://sago-nmg.com/

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