Yokohama Music Style 2022 ニュース イベント

Bizen Works Grain 5th Anniversary model & Burned

ギター製作者として長いキャリアがある坂本行宏氏が自身のブランド「Bizen Works」を立ち上げて、今年5周年となった。今回、Yokohama Music Styleには初めて参加となる。今回の出展は5周年記念モデルが中心となった。

▲Yokohama Music Style 2022でのBizen Worksブース

ギタータウンでは、6月25日にアップした速報記事を基に、坂本行宏氏のインタビューとショー終了後に都内の楽器店(Bottom's Up Guitars)に出荷されたGrainのレビューを追加し、大幅改定する。

Bizen Works 坂本行宏氏インタビュー

創業されてから丸5年が経過、6年目となりました。これまでの歩みなどについて教えてください。

坂本 行宏 氏(以下 敬称略) : おかげさまで創業時に比べると、スタッフも数名増え、生産本数も随分と増えました。でも、「足りない足りない」っていうぐらいでやりたくて。製品に付加価値をつけて、1本1本をちゃんとやっていきたいというのはあります。

丁寧さが製品から伺えます。創業段階からBizen Worksの取り扱い楽器店は多くありませんでした。人気になった今も、人気に比べると取り扱い楽器店はあまり増えていませんよね?

坂本 : 当初は生産本数がかなり限られていましたので、セレクトショップ、プロショップみたいな楽器店が中心になりました。現在は取り扱いのオファーを受けている楽器店様を含めても15店舗ぐらいです。

都内の楽器店さんでも愛知県の工房に足しげく通ってオーダーするお店も多いですよね?

坂本 : ありがたいことに。そういう楽器店さんはご自身で使う木材を選別しに来てくれます。

オーダーは楽器店さんからだけでしょうか?個人でも直接のオーダーは受けてくれるのでしょうか?

坂本 : 個人のお客様からの直接のオーダーももちろん可能です。

楽器店さんと個人のオーダーは何か違いはありますか?

坂本 : 特にはありません。販売価格も楽器店、個人ともに同じです。
個人の方も工房に直接お越しいただいて、材料をお選びいただけますし、遠方のお客様にはご希望の木材の画像を数点送り、その中から選んでいただけます。

私はBurnedの実機を見たのはこのショーが初めてなんです。特にあのモデルの多くはショップオーダーでも完成したら店頭に並ぶことなく、楽器店の得意客様にそのまま販売されてしまいますから。

坂本 : ありがたいことに、店頭ではそういうこともあるみたいですね。でも、最近は「店頭にも何本かおいておきたい」という楽器店様が多く、生産数を増やしています。
理想は店頭に何本か在庫があって、色や音も1本1本違いますし、お客様がそこから好きなものを選べるような状態です。中々生産が追い付いてはいませんが、、。

月間での生産本数はどのぐらいでしょうか?

坂本 : だいたい月産10本程度でしょうか

それで15の取扱店だとなかなか店頭在庫にはなりませんね。『Yokohama Music Style 2022』であれだけのギターが見られたのは貴重な機会ということですね?

坂本 : そうですね。ウチのショールームにもあれだけの本数が並ぶということはありませんから。
Bizen Worksを見にショーに来られた方も多く居られたのは素直に嬉しいです。

GrainとBurnedの特徴

現在のラインナップはGrainとBurnedの2タイプですが、ラインナップについて教えてください。

坂本 : Grainは1本1本材木も仕様も違いますが、Burnedは何種類かのラインナップがあって、同じ仕様のギターを数をまとめて作ります。それによってコストダウンが可能になります。

▲Grainたち

▲左の3本がBurned。右の2本がGrainだ。

▲これもヴィンテージ風にアレンジされたBurned JrとSPL色あいなどはかなりヴィンテージ風だ。

 

どちらも塗装がきれいですよね?特にBurnedではソリッドカラーもセールスポイントになっていると思いますが?

坂本 : Grainの場合は、仕様にもよりますが、意図的に塗装の下地にウレタン塗装を使っています。
Burnedの場合は、50年代のギターを意識しているので、100%オールラッカーです。仕上げ方に関しても、一度グロスに仕上げてから、ヴィンテージ感を出すために艶を落とす処理をひと手間、ふた手間かけて行っています。

Bizen Worksのギターはボディのアウトラインはレスポール・モデルとは違いますが、角度を変えて見るとレスポールっぽく見える角度がありますよね? それも「良いヴィンテージはこういう色だよね?」「こういうカーヴだよね?」っていう感じがします。

坂本 : Bizen Works製品のアーチの形状は50年代のレスポールを基にしています。

▲上と同様にバーストのようなアッセンブリとカラーリングのBurned。塗装の色合いやアーチの形状など、間近で見るとギターマニアを唸らせることがよくわかる。

坂本さんご自身もヴィンテージ・ギターをお持ちだそうですが?

坂本 : はい、資料としても重宝しています。私は元々ヴィンテージのギターが好きでこの業界に入りましたから。自分のコアにあるのはヴィンテージ・ギターで、他に車やバイクも全般的に古いものが好きなので、自分が好きなものをカタチにできているのかなと思います。

ゴールドトップはブラスパウダーを使っていますよね? やがて緑青のように風格が出ますよね?

坂本 : そうですね。今はクリアにブラスパウダーを混ぜて、その上にクリアを吹いています。お客様が弾いていくうちになると思います。オーナー様にはそれも楽しんでもらいたいです。

Burndを見ているとヴィンテージ・ギターが好きっていうことがよくわかりますね。僕もヴィンテージ・ギターは数多く見ていますが、「ここがかっこいい」とかのポイントがわかっているな、と感じます。たぶん、そこが坂本さんとお客様の共通項だからヒットするんだと思います。

▲アーチド・トップのBurned。ブラス・パウダーを使ったゴールド・トップ。バー・ブリッジ、ゴールドのスピード・ノブなど、ヴィンテージ・ギターの意匠を用いることで、ヴィンテージ風に見える。が、ホンジュラス・マホガニーやBizen固有のネックジョイントなどで、ギターとしては、やはりBurnedだ。

Bizen Worksのネック・ジョイントは独特ですよね。お会いしたら「なぜあのジョイントになったか」をお聞きしたかったんですよ。

坂本行宏氏(以下:敬称略) :“ギターを作る”ということは製造業ですので、作りやすさも考えます。もちろん、音や強度は大前提ではあるのですが。
いわゆる一般的なレスポールのセットネックは、現在の製法ではボディとネックはそれぞれ完成されたのちにジョイントされています。
ただ、それは精度的に疑問符がつくところなんです。でも、ボックス・ジョイントは精度的に絶対にごまかしがききません。
うちにはNCルーターもあるし、それなりの高い精度で加工ができるという自信もあって。試してみたら音も良かったので採用しました。

木材へのこだわりは?SNSを見ていると、よくあれだけの木材を見つけてくるものだなと感心します。

坂本 :ギターを10本作るとして、材木屋さんで「10本分だけください」といって10本分だけを仕入れれば、経営的な効率はよくなりますよね。
でも、自分は効率よりもお客様に楽しんでいただける事、より良いものを作る事の方が大切だと思っています。
なので10本のギターを作るにしても50本分の材の中から選んでもらった方が楽しいし、満足できる物できるとが思います。

今日拝見した中だとバール・メイプルトップの木取り、ブックマッチの模様も素晴らしいですね?

坂本 :あれも普通の色に仕上げちゃうと、杢目が活きてこないので、仕上がった後をイメージして着色の方法や使用する塗料を考えています。そうすると普段だったら「これはNGかな」と思う木材でも活きてくるんです。そうやってイメージしながら作っています。いまだに塗装に関しては色々な研究を続けています。
やっぱりパッと見た時に「かっこいいな」と思っていただかないと、手にも取ってもらえないとも思いますので、その部分はすごく意識しています。
もっともお客様の好みもありますので一概には言えませんが、「10人いて、8人9人にかっこいい」と思ってもらえるようなものを作っていきたいと思っています。

Grain 製品レビュー

Yokohama Music Styleには、楽器店もバイヤーとして入場し、展示されている製品を仕入れていた。今回、Bottom's Up Guitarsが購入したGrainを後日撮影できたので、細部まで紹介しよう。

■Bizen Works Grain 220284 5th anniversary Model

2022年6月の“ビゼンワークス創業5周年”を記念して作られたGrain。希少なブラジリアン・ローズウッドをネックと指板、ボディTOPに使用。さらに、色合いが異なるブラジリアン・ローズウッドをヘッドTOPに使用している。2020年代では他に例がないほどのゴージャスなスペックだが、楽器用木材としても極上の響きを持つ木材を使った1本でもある。

指板インレイは、マザー・オブ・パールのツリー・オブ・ライフとなっている。インレイと指板加工の両方で精密な加工が施されており、寸分の狂いもない。

ボディはホンジュラス・マホガニーを1ピースで贅沢に使用したバックに、ブラジリアン・ローズウッドのトップという組み合わせだ。本機ではブラウンとブラックが気品を感じさせるトップ材を使用。さらに木取りにも特徴がある。というのも、まずブックマッチのセンター部が完全にシンメトリックであり、さらに、ブリッジ側P.U.のボリュームとトーンの2つのノブの位置と木目を意図的に被せている。これは平板の状態で完成時の姿を意図できなければ作れない。

《Spec》

■Type: Grain Flat Top
■Color / Finish: Natural / Lacquer Gloss
■Body Top: Solid Brazilian Rosewood with Quilt Maple PG
■Body Back: Honduras Mahogany(1pc special)
■Neck: Brazilian Rosewood
■Fingerboard: Brazilian Rosewood
■Head Veneer: Brazilian Rosewood
■Back Plate: Brazilian Rosewood
■FB Inlay: Tree of Life(Mother of Pearl)
■FB Side Position Mark: Dot(Mother of Pearl)
■Scale / Radius: 635mm / 10"~14" Compound Radius
■Tuner: Gotoh Kluson Type
■Nut: Delrin
■Bridge: Gotoh Tune-O-Matic Bridge
■Tailpiece: Richlite
■Pickup: Bizen Original Vintage Type
■Control: 2vol, 2tone , 3way Toggle SW
■Case: Bizen Original Hardcase
■Weight: 3.48kg

本製品は5本製作された5th Anniversary Modelの1本でBottom's Up Guitars 東京本店の購入品です。

(取材協力 :Bottom's Up Guitars 東京本店 )

■Bizen Works Grain 220286

楽器店やお客様からのオーダーで作られることが多いGrainだが、このギターはYokohama Music Style 2022出展のために作られたGrain。つまり、坂本氏が、自ら木材を選び、その素材を自分のイメージで加工していくというデザインプロセスを経ているギターだ。

バール材は独特の木目が人気のトップ材だ。しかし、性質上、欠損部などもありがちで、木目がしっかり詰まった木材は極めて少なく、あっても特にバール・メイプルは高額だ。この Grain 220286は、そのレアなバール・メイプルをトップ材に使用。ブリッジの後方に、(ブリッジとほぼ同サイズの)木目の濃い部分を配置する木取となっている。トップのカラーはグリーン・バーストをチョイスすることで、まるで磨き上げた翡翠(ヒスイ)のような色合いを生み出している。

 

《Spec》
■Top Wood : Burl Maple
■Back Wood : Honduras Mahogany
■Neck Wood : Honduras Mahogany
■Fingerboard : Brazillian Rosewood
■Position mark : Parallelogram
■Head veneer : Maple
■Rod cover : Brazillian Rosewood
■Pickguard : Quilted Maple
■Tailpiece : Black Diamond
■Knobs : Bell
■Back plate : Brazillian Rosewood
■Heal cap : Ebony
■Pick ups : Vintage
■Color : Green Burst
■Finish : Laquer

本製品はYokohama Music Style終了後、Bottom's Up Guitars 東京本店に出荷されました。

(取材協力 :Bottom's Up Guitars 東京本店 )

Yokohama Music Style 2022のブースに登場したギターたち


▲バール・メイプルをブックマッチしたアーチトップのGrain

 

▲控えめの杢目がヴィンテージ風のルックスを醸し出すGrain。トップ材はハード・ロック・メイプルでアーチド・トップ。バックはホンジュラス・マホガニーだ。

 

カーリー・メイプルを使ったフラット・トップのGrain。

 


▲コリーナ材を使ったフラット・トップのBurned Korina

 


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