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Sound Recipe Special Vol.1 複数アンプ使用時のノイズ対策と位相

Sound Recipe Special Vol.1 複数アンプ使用時のノイズ対策と位相

動画解説: 林 幸宏(FREE THE TONE) Guest: 小野 雄一郎(butterfly inthe stomach)

単にエフェクターやアンプなどの製品を紹介するだけでなく、開発者やミュージシャンの立場から使い方などを紹介するコンテンツがSound Recipe(サウンドレシピ)だ。開発者側からのコンテンツ第一弾としてFREE THE TONEの林 幸宏 氏にご登場をお願いした。

 

林 氏はFREE THE TONEのブランドでエフェクターやパワーサプライをはじめとするミュージシャンが必要としている様々な機器を開発・製造・販売している。

活動はそれだけでなく、有名ミュージシャンがステージやレコーディングで使用しているエフェクター・ボードやラックなどの設計や提案、総合的なコンサルティングもしている。特にこの分野では第一人者である。記事に登場するピート・コーニッシュ製品の輸入販売。さらに、エフェクターに関するムック本の著者としても知られている。

一方、今回のミュージシャン・ゲストはbutterfly inthe stomachの小野 雄一郎さん。彼はドラマーとの2ピースという特殊な編成のグループのボーカル兼ギタリスト。特にライブではギターの弾き語りパートだけでなく、リードギター、ベースパートまで1本のギターでこなす。

彼のパフォーマンスは2ピースを感じさせない自然な演奏となっており、リスナーとして楽しめるだけでなく、プレイヤー目線でも興味深い。

 

動画 【複数アンプ使用時のグラウンド・ループ対策】

今回は、小野さんがステージで使用しているギターとエフェクター・ボードをFREE THE TONEのStudio ONPAに持ち込んだ。動画は収録に先立って、林 氏が小野さんに使用状況をヒアリングした上で、“グラウンド・ループによるノイズの発生”を指摘。実際に機材を接続し、そのまま収録をスタートした動画である。コロナ禍での収録のためスタジオ内の人数と撮影時間をセーブしたため、内容やカメラワークに不満が残るが、その点はご容赦いただきたい。

 


【 複数アンプ使用時のノイズ対策と位相 】

 動画の解説


※下記のテキストは動画の内容をわかりやすくするために、ギタータウンが書いたテキストです。ご承知ください。

ノイズの発生源となるグラウンド・ループ

まず、動画内で、小野さんは3台のアンプを使用しておりそれぞれの役目は、
・一般的なギター用=シルバーパネルのデラックス・リバーブ
・ファズなどのリード用=ブラックパネルのデラックス・リバーブ
・オクターブ・ダウン用=マーシャルのベースアンプ
という使い分けである。

このように2台以上のアンプを使うとグラウンド・ループという問題が発生しがちだ。グラウンド・ループは一般的なギタリストには馴染みが薄い言葉だ。しかし、グラウンド・ループは、それ自体がノイズの発生源となるだけでなく、ノイズを増やすアンテナのような役割も果たしてしまう。

グラウンド・ループとは

動画の中では前半部で音程感のある“ブーン”というノイズが発生している。このノイズがグラウンド・ループに起因したノイズだ。
やや専門的な話となるが、グラウンド・ループは、接続している機器と機器との間の電位差があると発生する。また、これは音声信号のケーブルだけでなく、コンセントに繋いだ電源のアース線を通じて、グラウンド(大地)を介しても発生する。意外だが、電源側のノイズも音声信号に紛れ混んでしまう。

今回の動画の前半部では、グラウンド・ループが発生する箇所を減らすため、3台のアンプ全てアースを浮かせた2ピンの状態で電源を取り、同時に使用している(下記 : 図A)。一見、それぞれのアンプ毎にアースした方が良さそうに思うが、小野さんのギターシステムでは、逆にグラウンド・ループの原因となってしまう。アースを取った状態では、それぞれのアンプの音声信号グラウンドとアンプの電源コンセントのアースを通じたグラウンドが大きなループ(輪)を作ってしまい、“ブーン”というノイズが発生してしまう(下記 : 図B)。

グラウンド・ループの対策

グラウンド・ループが出来てしまう時は、シグナル・トランスを使い、ループの輪を電気的に切ってしまう対策方法がある。この場合では、アンプの電源側でアースを取ることができるため、電位差を無くすことができる。

今回の動画では下記の方法で対策している。

小野さんが使っていたスイッチャーをピート・コーニッシュの「A/B/Cボックス」に変更した。A/B/Cボックスはグラウンド・ループの発生を防ぐためのシグナル・トランスを内蔵しているスイッチャーだ。

ペダルボード側とアンプ間で発生するグラウンド・ループを断ち切った上で、1台のアンプを3ピン(アース付)コンセントに挿し、ギター・システムとしてアースに繋がっている状態にした。こうすることで、PA側と電位差が発生しないシステムにすることができたわけだ(下記 : 図C)。

今回使用したFender Deluxe Reverbアンプの2台は、電源プラグがアースピンの無い物だったため、アースを取ることができなかったが、アース付きのアンプであれば、A/B/Cボックスを使った上でアースを落とすことができたことも追記しておく。

今回は、ギタータウンの取材記事取材用に機材を仮接続し、グラウンド・ループが起因するノイズがどういうものかを説明した。FREE THE TONEで行われている完全なノイズ対策を実演した動画ではない点はご容赦いただきたい。

 

PETE CORNISH A/B/C BOX

PETE CORNISH A/B/C BOX

PETE CORNISH A/B/C BOX
(3WAY SPLITTER WITH MUTES Dual Voltage 9/24VDC)

http://tonegold.shop21.makeshop.jp/shopdetail/000000000016/

ピート・コーニッシュのA/B/C BOXは、3つのアンプを同時に接続し、切替できるスイッチャーだ。低インピーダンスのバランス出力により、音色やレベルをロスすることがない。

■グラウンド・ループの対策機能
グランド・ループ・ハムを発生させることなく、長いケーブルを使用できる。「出力A」と「出力B」はフローティングとなっており、グランド・ループの発生を防止する。(アンプは信頼できる電源グランドに常時接続してください。内蔵したトランスによって3つの全出力の信号レベルは同一にしているので、出力を変えても性能に違いは生じません。)

■位相反転機能
本機の背面は「出力A」および「B」用の位相反転スイッチが設けられており、このスイッチで位相を揃えることができる。なお、「出力C」はリファレンス・チャンネルのため位相反転スイッチは装備されていない。

(複数台のアンプを使う時、ほぼ半分の確率で第二、第三のアンプが第一のものに対して“逆相”になってしまう。どのような状態にあるかは次のようにして調べることができる。まず第一のアンプを「出力C」につなぎ、次いで第二のアンプを「出力A」または「B」に追加。接続すると音量が少しだけ増えて豊かな感じになるはずだが、第二のアンプを追加したときに音量や低音が減った場合は第二のものが“逆相”と判断できる。)

ギタータウンの動画の後半部分では、A/B/C BOXの背面のスイッチでアンプの位相変換が実演されているのでそちらで機能をご確認いただきたい。

butterfly inthe stomach & 小野雄一郎 Infomation

Release

butterfly inthe stomach
「SKIN」
2020.5.1 Release!!! SPRN-08_DIGITAL / ¥1,600
01.100%中の100%
02.Hey dance! Hey joy!
03.席替えブルース
04.チャオズ
05. 謝々マイフレンド
06. Time
07. Highway97

https://linkco.re/rBqqg690

 

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