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Bizen Works クロサワ楽器池袋店 カスタムオーダー -2020 Summer-

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最近、Bizen Works(以下、ビゼン・ワークス)というブランド名を耳にすることが増えた。愛知県春日井市で2016年にスタートしたギターブランドだが、1本1本がオーダーメイドで作られているため、店頭に並ぶ機会は多くない。ギタータウンでは別の取材でクロサワ楽器池袋店本館3階を訪れた際に、ビゼン・ワークスが数多く展示されているのに気付いた。以前、ギターショーで見たビゼン・ワークスのブースではコンテンポラリーな仕様のギターが印象に残っていたが、このフロアにあるのはレスポールを思わせるヴィンテージ風のルックスだったからだ。さらに、良く見てみるとそれらは、ホンジュラスやキューバといった名だたる産地の木材が使われている。

大変気になったので、このギターたちをオーダーしたクロサワ楽器池袋店の石井 雄揮 副店長に、ビゼン・ワークスの魅力とこれらのカスタム・オーダー・ギターについて話を訊いた。

クロサワ楽器 石井 雄揮インタビュー

クロサワ楽器 池袋店 石井 雄揮 副店長

クロサワ楽器店池袋店本館3Fでは、国産・海外製問わずマニアックな商品を多く取り揃えております。

ハイエンドからビンテージタイプまで幅広いジャンルのギターで構成されたフロアなので『〇〇専門』といったジャンルの壁はございません。

国内でもここのフロアでしか取り扱いの無いブランド等も多数取り扱っております。ギターが好きな方や実践向けのギターをお探しの方から喜んでいただける様なフロアとなっております。

また、ギターのオーダー相談やオーダーにおける木材選定等といったご依頼も承っておりますので、自分だけのギターが欲しい方や理想を追求したい方もぜひお気軽にご相談下さいませ。

-石井さんがビゼン・ワークスと出会ったのはいつ頃のことでしたか?
2018楽器フェア

2018年の『楽器フェア』でした。もちろん、ブランドの名前は以前から知っていましたし、お客様からの噂としては聞いていました。でも、量産品と違い、楽器店が在庫を持って店頭に並ぶものでもありません。僕は好きなブランドの場合、プライベートでも工房に行くことも多いのですが、その頃は知らないブランドだったので愛知県まで見に行けないな・・と思っていました。でも、楽器フェアの会場で実物を見て、触ってみたところ、その場で展示されていたフラット・トップを2本とアーチ・トップを1本を即決で仕入れさせていただきました。

 

-その時、ココが良いと思った点は?

単純に、“良い音”が決め手です。ハムバッカーとしてはエッジが立った音で、音に輪郭があります。ギブソンカスタムの製品などでも、音の分離が良いモノを“当たり個体”のように言いますよね? ビゼン・ワークスはそれに近いんですよ。

 

-石井さんは工房に脚を運ぶことが多いですが、ビゼン・ワークスには、どのぐらいの頻度で行っていますか?

お客様からのオーダーを見計らいながら、頻度ではだいたい3か月から半年に一度だと思います。

 

-石井さんが愛知のビゼン・ワークスの工房まで出向く理由は?

池袋店石井さん特に指板材などでは杢目だけで選んだら音はわからないじゃないですか? だから、良い音が出そうなものを選びたいというのはあります。

 

-え?指板材を?工房に行くと出音がわかるのでしょうか?

僕の場合、指板を指で叩いて判別しています。

 

-・・・それでわかりますか?

はい、わかります。お客様は僕のことを信頼していただいているからこそ、オーダーしていただいています。そうすると、お客様から「オーダーするから見てきてほしい」と依頼されると、「僕が行かなきゃ」という気持ちになります。僕は、実際に木材を見ないと安心できないのです。別に東京と愛知県春日井市も近くではありませんが、海外の工房に比べればはるかに近いですものね。

 

-ビゼン・ワークスの工房には世界の色々な産地から、また、様々な種類の木材が揃っていると聞いています。石井さんはその中から木材をどのように選んでいますか?

ビゼンファクトリーキルトのトップ用の木材の場合、工房の中でキルト材ばかりを並べてもらって、僕なりの良し悪しを決めて、良いモノだけを残します。ビゼン・ワークスでは「今、面白い木材はありますか?」と訊くだけで、キューバン・マホガニーとか1ピースで使えるキルト・メイプルとか、すごい木材が出てくることもあります。ビゼン・ワークスは本当にテンションが上がる木材を持っています。すごく希少なホンジュラス・マホガニーもストックしていて圧巻です。たぶん2千本分ぐらいはあるんじゃないでしょうか?だから、カスタム・オーダーが最高に楽しい工房です。

 

-今日は店頭に8本が並んでいます、これらはお客様ではなく、石井さんがコーディネートしたギターですよね。石井さんのオーダーの秘訣のようなものはありますか?

モデルとしては、ビゼン・ワークスは今“グレイン”という1機種だけです。それを基にカスタマイズするスタイルです。グレインはシングル・カットなので、お客様のイメージはレスポール的に見えています。つまり、お客様の目線では「レスポールを再現したいはず」なのです。でも、ビゼン・ワークスさんは「オリジナリティを追及している」ブランドですよね。だから、両者の間に立って「お客様とメーカーさんの両方のリクエストを融合させて、本当に良いモノを作る」ことが僕の仕事だと思っています。

 

-僕も今日、色や2ハムの仕様を見てレスポールのつもりで抱えてみたんですよ。でも、スケールが25インチだったり、コンパウンド・ラジアスだったり、左右非対称ネック・グリップとか・・抱えた瞬間に「レスポールとは違う」と思ったんですよ。

Grain Arched Top #191274

レスポールが欲しい方は、ギブソンのレスポールをお買い上げいただければ結構です。ご存知のように当店ではギブソンのレスポールもたくさんお取扱していますから。当店がビゼン・ワークスにオーダーしているギターは、普段レスポールをお持ちの方でも別の音が欲しいとか、こちらの方が弾きやすいとか、ビゼン・ワークスの魅力を感じ取ったお客様向けのギターだと思っています。案外、そういうお客様って少なくありませんよ。

 

-すでにお買い上げになったお客様はどのようなジャンルのプレイヤーでしょうか? また年齢とかの傾向はありますか?

年齢も音楽性も幅広いですよ。お買い上げいただいたお客様の多くは、店頭で見かけたから、気になって、試奏して・・・でも、決して安い品物ではないので、じっくり考えて納得した上でお買い上げいただく方が多いですね。

 

-ピックアップの選択も石井さんでしょうか?

はい。基本となっているのは“モダン”と“ヴィンテージ”という2つのオリジナル・ピックアップです。モダンはコイルタップもできて便利です。もうひとつのヴィンテージは出力が弱めに作られたピックアップです。僕はヴィンテージの方を選ぶことが多いです。これは出力が弱いからこそ、お客様は吠えるようなサウンドを出せる、みたいな考えです。

 

-ノブなどが木製なのも魅力的ですよねですよね。

Grain #200592

単に木製というだけではありません。ギターを作った時に出る端材などをノブとして取り付けたい、という考えが根底にあるようです。どこかの誰かが別の木材で作ったノブではなくて、同じ工房で出た端材をパーツに加工して作っています。その辺にもロマンを感じてほしいです。

 

-お客様がオーダーできる内容は?

トップのアーチの有無、木材の選定、色、ピックアップなど多岐にわたります。最近、お受けしたオーダーの中では、ナット幅を変えてほしいというものもありました。お客様と僕とで相談をした上でオーダーしますが、かなり融通を利かせてくれるブランドだと思います。それこそセミ・ホロー(シンライン化)やウエイト・リリーフ(=ボディをくり抜く加工での軽量化)もオーダーできます。

 

-今日の在庫の中にもウエイト・リリーフ加工したギターがありましたよね。

ビゼン・ワークスに幅広い技術があるのはもちろんですが、当店ではかなりの本数のオーダーをしているので、そのオーダーを取り入れた結果がどうなるかなどのノウハウもすでに蓄積されています。

 

-僕は今日ギターを撮影をしましたが、この色のモチーフはあのギターだよな・・みたいに思いながら撮っていました。そういう細かい色合いの出し方もオーダーできますか?

細かいというか、このギターに似せてほしいというようなオーダーも出来ます。僕もオーダーする時に写真や印刷物を色見本として使うことがあります。色の場合、お客様も同様にすればオーダーしやすいと思います。

 

-石井さんが今オーダーしているギターは何本ぐらい製作中でしょうか?

たくさんあります。10本以上です。

 

-すごいですね。それらのギターの仕上がりはいつ頃でしょうか?

今オーダーをいれている最後のギターの納品ですか? たぶん年末ぐらいかなと思います。オーダーしてから完成まではだいたい半年が目安ですね。

 

-安い商品ではないので、あえて伺いますが、オーダーしたギターが不要になった時の買取や下取りは優遇してもらえますか?

もちろんです。ビゼン・ワークスは質の高さだけでなく、生産本数も限られています。また、1本1本の仕様が異なるので、1本ごとの価値が高いブランドです。だからこそ、当フロアとしてはオーダーを受け付けるだけでなく、店頭に展示してある中から、お好きなビゼン・ワークスをお選びいただける環境作りが大切だと考えています。気になった方が、アクセスが良い池袋の当店にて、ビゼン・ワークス製品を実際にご覧いただくことも目標のひとつです。

《 グレインの特徴 》

ビゼン・ワークスは現在“グレイン”の1モデルだけだ。それを基に楽器店などのオーダー主が「アーチトップの有無」、「木材/PUの選択」、「詳細な色の指示」などをカスタムオーダーで変更。それにより印象が異なるギターを生み出している。

しかし、グレイン自体には、独自の仕様がデフォルトで数多く盛り込まれている。

◆ボックス・ジョイント / セット・ネックで、ネック・ポケット側にもボディとネックの接触部分があるのが特徴。

◆ヒールレス・カット / ボックス・ジョイントはヒール部分が一般のセットネックよりも薄い。さらに、ベベルト・コンター加工で角を削ることで、独自のヒールレス・カットを実現。

◆25インチスケールとコンパウンド・ラジアス指板 / コンテンポラリーなギターで主流になりつつある25インチ(635mm)スケールと円錐状に指板のR(アール)を変化させるコンパウンド・ラジアスの採用。

◆左右非対称ネック / ネック・グリップの凸部のピークをやや低音弦側にシフト。

◆バック・コンター / ボディ・バックには演奏者の身体にフィットしやすいバック・コンター加工。

◆弦の裏通し / 下記のレビューでは便宜上「テイルピース」と表記している木製パーツがあるが、それは「装飾品」だ。ギターの構造は「裏通し」により、ボディ裏から弦を通している。

など、コンテンポラリー・ギターにふさわしい仕様と独自アイデアによる基本設計がされている。


Order Case 1 / Grain Arched Top #191274

Grain Arched Top #191274 / キューバン・マホガニー材を1ピースボディ&ネック。シャドウ・バースト・カラーの至極のグレイン

bizen-works

▲Bizen Works Grain Arched Top #191274

Quilt Maple Top, Jacaranda FB,1-Piece Cuban Mahogany Body&Neck 

(Shadow Burst) 

価格=820,000円(税抜)

グレインのアーチトップ・モデル。キューバ産のキューバン・マホガニー材をボディに1ピースで使用、ネックも同様だ。この材は木材の品種としても(亜種ではない)正真正銘のマホガニーだ。ただし、重さもあるためウエイト・リリーフ加工で総重量を調整している。石井氏が工房でチョイスした指板はハカランダ。これは見た目ではなく、材料を叩くことで硬質なハカランダを選別したものだ。逆に、見た目を重視したのはトップ材。木材の表面/裏面の両方に美しい木目があるメイプルを選別し、2ピースでブックマッチ。そのため、起伏のあるアーチの全面で美しい木目が出ている。加えて、塗装はレスポールなどで人気のシャドウ・バーストと称される濃い赤のエッジから中央部の黄色に変化するカラーとなっている。

■Body Top : Arched Curly Maple ■Body Back : Cuban Mahogany 1-Piece ■Neck Wood : Cuban Mahogany 1Piece ■Fingerboard : Brazillian Rosewood (Jacaranda)  ■Scale : 635mm ■Pickup : Bizen Vintage Custom ■Tuner : Gotoh 510 ■Bridge : Gotoh Tune-O-Matic ■Finish : Lacquer Gloss


Order Case 2 /Grain Arched 1P Quilt Top #200592

Grain Arched Top #200592 / キューバン・マホガニー・ボディと1ピースのキルト・メイプルトップの究極のグレイン

Grain Arched 1P Quilt Top #200592

▲Bizen Works Grain Arched Top #200592

1-Piece Quilt Maple Top, Jacaranda FB, 1-Piece Cuban Mahogany Body&Neck

(Dark Green Lemon Burst)

価格=860,000円(税抜)

グレインのアーチトップ・モデル。こちらもキューバン・マホガニーをボディに1ピース、ネックにも使用。また、指板も石井氏が音で選別したハカランダを採用している。何といっても注目はアーチトップに使われているキルトのメイプル。通常は2ピースのブックマッチとして使うことが多いが、このギターでは1ピースで作られている。アーチトップの場合、2つのPU部付近だけがほぼ平面で、ボディの他の部分は立体的だ。このギターではテイルピースからボディ周辺部の立体的な部分のキルトが他では見られない杢目なのがわかる。また、色もトグルスイッチ付近が赤があり、ボディ・トップはレモンバーストのカラーになっている。

■Body Top : Arched Quilt Maple 1-Piece ■Body Back : Cuban Mahogany 1-Piece ■Neck Wood : Cuban Mahogany 1Piece ■Fingerboard : Brazillian Rosewood (Jacaranda)  ■Scale : 635mm ■Pickup : Bizen Vintage Custom ■Tuner : Gotoh 510 ■Bridge : Gotoh Tune-O-Matic ■Finish : Lacquer Gloss


Order Case 3 /Grain Arched Top #191273

Grain Arched Top #191273 / ホンジュラス・マホガニーとハードメイプルが生み出すヴィンテージ・ライクな崇高なるグレイン

▲Bizen Works Grain Arched Top #191273

Hard Rock Maple Top, Jacaranda FB, 1-Piece Cuban Mahogany Neck

(Green Lemon Burst)

価格=750,000円(税抜)

グレインのアーチトップ・モデル。ホンジュラス・マホガニーを1ピースでボディ材にしつつ、ネックにはキューバン・マホガニーを使用した。トップはサウンドに優れたハード・ロック・メイプル材を使用。ハードメイプルでここまで杢目が出ているのは希少だ。ホンジュラス・マホガニーやハードメイプルはヴィンテージ・ギターにも使われていた木材としても知られており、ヴィンテージ・ライクなサウンドを目的にコーディネートしているが、それでいてここまで美しく仕上がるのは珍しい。また、指板材はハカランダ。他に、ヘッドの表/裏の化粧板にはグロス仕上げされたハカランダが張られており、異彩を放っている。

■Body Top : Arched Hard Rock Maple ■Body Back : Honduras Mahogany 1-Piece ■Neck Wood : Cuban Mahogany 1Piece ■Fingerboard : Brazillian Rosewood (Jacaranda)  ■Scale : 635mm ■Pickup : Bizen Vintage ■Tuner : Gotoh 510 ■Bridge : Gotoh Tune-O-Matic ■Finish : Lacquer Gloss


Order Case 4 / RT #161103

RT #161103 / 稲妻を思わせるホンジュラス・ローズウッド・トップの復活のRT

▲Bizen Works RT #161103

Honduras Rosewood Top

 (Natural Gloss)

価格=398,000円(税抜)

RTはグレインの基となったモデルで、現在は生産されていない。このギターのシリアルは2016年製だが完成し納品されたのは19年だ。というのも、石井氏が工房で未完成のままになっていたRTを見つけて、完成させたものだからだ。フラット・トップ・モデルでボディはホンジュラス・マホガニー。そのトップにホンジュラス・ローズウッドを使用している。トップには白い線状の模様がボディのセンターに向かっているのが目を惹く。また、指板は漆黒のエボニーだ。現在の仕様とは異なる部分もある。サウンドは石井氏がお薦めしており、太いフロントPUに特徴があり、ロングトーンでは特に心地良い。生産終了品ということもあり、価格がリーズナブルだ。

■Body Top : Honduras Rosewood ■Body Back : Honduras Mahogany ■Neck Wood : Honduras Mahogany ■Fingerboard : Ebony ■Scale : 635mm ■Pickup : Bizen Vintage ■Tuner : Gotoh 510 ■Bridge : Gotoh Tune-O-Matic ■Finish : Lacquer Gloss


Order Case 5 / Grain #190757

Grain #190757 / 極細杢目のフレイム・メイプルを肉厚に使用した傑出のグレイン・フラット・トップ

▲Bizen Works Grain #190757

Curly Maple, Cuban Mahogany Neck

(Natural Gloss)

価格=550,000円(税抜)

2019年の夏に御茶ノ水のソラシティで開催された「お茶の水大楽器祭」に出展するために作られたショー・モデル。今回の記事に登場するグレインでは唯一のフラット・トップモデルだ。ボディはホンジュラス・マホガニーで、トップには細かい線上の模様が特徴のフレイム・メイプルを使用。このトップは単なる化粧板ではなく、しっかりとした肉厚があり、トーンウッドとして、メイプル・トップの役割を果たしている。また、美しい杢目を生かすべく、ナチュラル・グロスで塗装されている。このギターではネック材にキューバン・マホガニーを使用している。また、指板材は通称ニュー・ハカランダとも呼ばれるマダガスカル・ローズウッドを使用している。

■Body Top : Curly Maple ■Body Back : Honduras Mahogany ■Neck Wood : Cuban Mahogany ■Fingerboard : Madagascar Rosewood ■Scale : 635mm ■Pickup : Bizen Vintage ■Tuner : Gotoh 510 ■Bridge : Gotoh Tune-O-Matic

 


クロサワ楽器池袋店【エレキ本館】

www.kurosawagakki.com/sh_ike

住所:東京都豊島区南池袋1丁目25-11 第15野萩ビル B1F

お問合せTEL:03-3590-9638
E-mail: ike@kurosawagakki.com
営業時間 : AM11:00~PM8:00

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